人の大腸の長さは、成人で約1.5mもあり、盲腸、結腸、直腸の3つの部分によって構成されています。さらに、結腸は順に上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸に分かれ、S状結腸を経て長さ約15cmの直腸へと続きます。最終的には直腸から肛門管となります。
肛門は、消化管の末端に位置する長さ約3〜4cmの管状部分で、通常は、肛門括約筋により閉められています。発生学的には直腸(粘膜)と皮膚とがつながってできたもので、その接合部は、ちょうど歯並びのように見えることから歯状線と呼ばれ、これを境に神経支配が異なっています(※)。また、肛門の周りには細かい血管が集まっており(静脈叢)、うっ血が大変起こりやすくなっています。このように肛門は、複雑な構造をしており、しかも糞便の通過などの刺激をうけやすいところなので、さまざまな疾病が起こり症状も多彩です。
図:黒川梅田診療所(大阪市) 医学博士 黒川彰夫
(※)歯状線より上/ 自律神経支配のため痛みをさほど感じない部分。
歯状線より下/ 知覚神経支配のため痛みを強く感じる部分。


肛門ができる時期は、人間が胎内にいる最初の頃で、約8週から10週目くらいの時期に外側に向かっていく内臓(内胚葉性の原始直腸)と、内臓側に向かっていく皮膚(外胚葉性の原始肛門)とがお互いに接することによって作られます。また、肛門ができた時のおしりの皮膚と消化管のつなぎ目には、歯状線と呼ばれるギザギザの歯並びのような線ができます。この線の下部には知覚神経があり、直腸から降りてきた物が液体なのか固体なのか、あるいは気体なのかを識別します。

歯状線を境にして、上部は自律神経が支配しているので痛みを感じませんが、下部は知覚神経が支配しているのでこの範囲に疾患があると痛みを感じます。痛みの有無で、疾患のおおよその位置を判断することができるのです。

直腸肛門部には動脈と静脈の血管が複雑に交わりながら走っています。静脈の末端には毛細血管が毛糸玉のように集まった静脈叢が発達しており、歯状線より上のものを内痔静脈叢、下のものを外痔静脈叢と呼びます。この2種類の静脈叢は後で述べる痔核(いぼ痔)に大いに関係する血管です。


肛門の開閉は、内肛門括約筋と外肛門括約筋といわれる2つの括約筋によってコントロールされています。直腸に近い内肛門括約筋は排便時以外は無意識に肛門を閉める働きがあり、肛門の出口にある外肛門括約筋は意識的に便意をこらえて肛門を閉じたり、排便時に肛門を開いたりする働きがあります。