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教えて!ドクター

西新駅前こうの整形外科・おしりとおなかクリニック
副院長
河野 由紀子 先生

プロフィール

西新駅前こうの整形外科・おしりとおなかクリニック 副院長

2023年に西新駅前こうの整形外科・おしりとおなかクリニック勤務
日本外科学会専門医
大腸肛門病学会専門医
臨床肛門病学会技能認定医
消化器内視鏡専門医
上部消化管/大腸内視鏡 スクリーニング認定医
がん治療認定医

西新駅前こうの整形外科・おしりとおなかクリニック
〒814-0002
福岡県福岡市早良区西新4丁目8-38 2F

食物繊維と水分を意識して摂ること

食物繊維をしっかり摂ることが、便秘予防のためには特に大切と考えています。厚生労働省は1日25グラムの食物繊維摂取を目標として掲げていますが、これは多くの方にとってハードルが高いと思います。特に若年層を中心に、朝食をとらない方や、朝はコーヒーとパンだけという方も多く、そういった食習慣では食物繊維はどうしても不足しがちになります。また朝食後は、胃の中に食べ物が入ると「胃結腸反射」が起き、腸が動いて寝ている間に消化したものを排便しやすくなるので、そういった意味でもきちんと朝食を摂ることをおすすめします。
また、水分補給も大切です。コーヒーやお茶などカフェインを含む飲料は利尿作用があり体外へ排出されやすいため、カフェインを含まない水や麦茶などを、できれば食事といっしょに摂るのが望ましいでしょう。

欧米を中心に広く使われる「水酸化マグネシウム」

便秘の患者さんには、できるだけ非刺激性の薬を処方しています。刺激性が絶対にだめということではないのですが、常用は望ましくなく、どうしても排便できない場合に限るなど、2〜3週間に1回以下に留める必要があります。刺激性便秘薬を続けて服用すると、薬を飲まないと腸が動かない状態になったり、腸内が真っ黒になる大腸メラノーシスになってしまうこともあります。
非刺激性の便秘薬では、その安全性の高さなどから、まずはマグネシウム製剤を検討します。マグネシウム製剤には「酸化マグネシウム」と「水酸化マグネシウム」があり、前者は胃薬を服用している方、後者は牛乳アレルギーの方への処方に注意が必要といった特徴があります。どちらも処方可能な患者さんには、欧米でより一般的とされる水酸化マグネシウムを用いることが多いです。市販薬でもマグネシウムの入ったものがあるので、まずはそちらを使用してみるのも良いでしょう。
ただし、高齢者や腎機能が低下している方ではまれではあるものの高マグネシウム血症の恐れがあるため、そういった場合はポリエチレングリコール製剤や上皮機能変容薬などを処方することもあります。市販薬でも容量を守らないと同様の恐れがあるので服用量はきちんと守りましょう。

漢方薬やサプリメントにも、要注意な成分がある

漢方薬にも有効なお薬が多くあるため、処方することがあります。ただ、「漢方はやさしくて安全」というイメージを抱く方も多いのですが、実は必ずしもそうとは限りません。植物が原料のものが多いので、一見ソフトなイメージがありますが、実は刺激性の成分が含まれている場合があります。便秘薬ではない、例えば「脂肪を減らす」などと謳われている漢方薬にも、それらの成分が含まれていることもあるので、成分には注意が必要です。
また、薬だけで便秘を解消するには限界があるため、サプリメントの併用もおすすめしています。食物繊維や整腸系のサプリメントは、安全性という点でも問題ないものがほとんどです。ただし一部のサプリメントやお茶などには、漢方薬と同様の刺激性成分が含まれているものがあります。当院では、患者さんが自分で購入した商品の安全性に不安がある場合には、パッケージを持参いただき確認しています。

薬は2週間を目安に効き目を判断する

便秘薬の服用は、基本的にはそれぞれの薬ごとに指示された内容を守ってください。刺激性の薬は多くが1日1回の服用ですので服用の量の上限とタイミングを守ることが重要です。非刺激性の薬も、用法をきちんと守ることで、薬の効果が出やすく、逆に副作用が出にくくなります。
なお当院では薬の効果は基本的に2週間単位で判定しており、一般的にも1-2週間での判定が妥当だと思います。初めての薬は飲み始めて数日では効果が出ず、1週間程度経った頃から調子が良くなることがあるからです。ご自身で市販薬を試された場合、添付文書に期間の記載がない際には、2週間服用しても便秘が改善しなければ一度病院を受診したほうがいいでしょう。

洗いすぎは、かえって良くない

当院を受診される患者さんは比較的女性が多いのですが、よく相談を受けるのが、肛門や腟のまわりの皮膚のかゆみや痛みの症状です。特に若い方に多い印象です。原因として、排便時のおしりの拭き方、夏場のムレ、おりものシートとの相性や、多忙でシートをこまめに取り替えられないことなどが挙げられますが、実は最も多いのが「洗いすぎ・拭きすぎ」です。清潔にすることは悪いことではありませんが、行き過ぎてしまうと、逆に良くないのです。肛門や腟の周辺は、便やおりものが体外へ排出される場所なので、「常在菌」が存在するのが当たりまえです。でも、その常在菌を落としてしまうほど懸命に洗いすぎる方がいるのです。
温水洗浄便座も洗いすぎは良くありません。時間は数秒程度と短く、低圧にするなどしましょう。入浴やシャワーも1日1回に留めて、その際も強い刺激を当てすぎないこと。洗いすぎるくらいなら、まだ放ったらかしのほうがベターと言えます。違和感が気になる場合は、クリームなどで軽く保湿するとよいでしょう。こういった、いわゆるデリケートゾーンの皮膚トラブルは、病院に相談に来るまでに時間がかかるケースが多いです。お話を聞くと数年間もかゆみが続いています、という方もいます。「もう限界!」という状態になってようやく、勇気を振り絞って相談に来られるという傾向です。

今までなかった症状を感じたら、まず病院に相談を

ご自身の体と長く付き合っていて、「あれ?前はこんなことなかった」や「最近、ちょっと気になる変化がある」などを感じた場合は、とにかく一度病院に来て相談してほしいです。原因が単なる皮膚の傷ではなくウイルス感染症の場合など、「早く来ていれば飲み薬でラクに治ったのに」ということも多いです。
また、自己判断で「ただの便秘だろう」と思いこんでいた方が、実はがんでした、というケースもあります。そのような場合は一刻でも早期に発見できることが重要です。逆に「この症状、がんじゃないかしら・・」とずっと悩んでいた方が、実は何でもないただのシワだった、ということもあります。いずれの場合も、適切な診察ですぐ判明することなので、「大げさすぎないか?」などと考えず、ぜひ一度医師に相談してください。
女性の方で、男性の医師に診察されるのは恥ずかしいという患者さんは少なくありません。また男性の中にも、同性医師に悩みを伝えるのが恥ずかしい、という方もいらっしゃるのです。そのような場合は、私も含めて女性医師がいる病院を探してもらえればいいと思います。

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